日本社会は少子化が進み、あらゆる分野にその影響が及んでいます。
スポーツの業界に身を置く身としては、スポーツにおける競技人口の減少は他人ごとではありません。
刻一刻と進む少子化はスポーツにどんな影響を及ぼすのでしょうか。
少子化が球技人口に与える主な影響
1. 競技者数の絶対的減少
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子どもの数が減れば、当然ながらスポーツを始める母集団も小さくなります。
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人数が必要な競技(例:野球、サッカー、バスケ)では、選手の確保が困難になり、チームの減少や存続が危ぶまれる状況が増えています。
2. 地域格差の拡大
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人口の都市集中により、地方ではチームが組めずに消滅するケースが増加。
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都市部ではチーム数は維持されるが、レベルのばらつきや機会不均等が問題に。
3. 競技レベルの二極化
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人口減により「できる子に集中する指導」になりやすく、エリートとライト層の分断が進む。
4. 育成モデル、大会運営の問題
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競技者減により、これまでのスケールでの育成モデルや大会運営が成り立たなくなる。
「子どもが自然と集まってくるようなスポーツチーム」の存在
スポーツに関わる仕事に従事している身としては、少子化という避けようのない現実のなかで少しでもスポーツに関わってくれる子供たちの数を増やすということが重要な役割を果たすと考えています。
そのカギになるのが、「子どもが自然と集まってくるようなスポーツチーム」の存在ではないでしょうか。
昨年末からJSPO公認スタートコーチ(ジュニア・ユース)およびコーチ1の学びを進める中で、
「こんなチームがあれば、もっと多くの子どもたちがスポーツに関わってくれるのではないか?」
そんな思いから、自分なりの理想のチーム像をまとめてみました。
■ 子どもが「やりたい」と思えるチームづくり
これまでのスポーツ現場では、大人のエゴに基づいた勝利至上主義や厳しい指導が当たり前のように存在していました。しかし、少子化の時代には「やりたい子が減る」ことが最大のリスクです。
そのためには、「このチームなら楽しそう」「行きたい!」と思える環境が、何よりも大切だと考えます。
■ なぜ「楽しめるスポーツ団」が必要なのか?
① 参加率を高めるため
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少子化により「やる子自体が減っている」状況では、まず母集団を増やすことが何より大事。
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楽しければ子どもは自然と続けるし、口コミで人も集まりやすい。
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強制や成果主義では「続けたくない」が勝ってしまう。
② スポーツの本質は“楽しいからやる”
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上手い・強い以前に、「動くこと」「仲間と関わること」が楽しいという体験がすべての出発点。
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楽しい経験があって初めて、「もっと上手くなりたい」「続けたい」という内発的なモチベーションが育つ。
③ 多様な子どもたちが安心して参加できる場に
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昔よりも個性が多様化した現代の子どもたちには、勝敗以外の価値も認める場所が求められる。
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発達段階・家庭環境・性格の違いに応じて「居場所」があることが重要。
スポーツを楽しむ心を育てるために:チームづくりの6つの理念
そこで、私は次の6つの方針を大切にしたいと考えています。
1.暴力、暴言は絶対にNG
当然のことながら、絶対に守られるべき姿勢です。指導者や仲間同士の暴力・暴言は、子どもの心を深く傷つけ、スポーツそのものへの嫌悪感を生みます。安心して挑戦できる環境づくりの第一歩です。
2.礼儀、マナーの啓蒙
技術よりもまず人間性。スポーツはチームワークや相手へのリスペクトが土台です。自然にあいさつができる、感謝が言える、そんな姿勢は子どもたちが一生持ち続けられる財産になります。
3.雑務は大人も率先してやる
大人がふんぞり返って子供にやらせて当然のことという風潮を捨て、楽しく安全にスポーツを楽しめる環境づくりを大人が率先して行う姿を見せることで、その必要性を示すことができる。
安全管理や楽しいを優先
子供たちが安全にスポーツを楽しめる、保護者が安心して預けられるスポーツ団としての環境をつくる。
ケガを防ぐ、安全に帰れる、また来たいと思えることは最優先です。勝ち負けよりも、毎回「楽しかった!」と言える体験が将来の継続や成長につながります。
上手い下手関係なく機会を平等に与える
「試合に出られる子だけが主役」にならないことが何より重要です。成功体験や挑戦の機会を平等に与えることで、子どもの自己肯定感ややる気を育む。
自主性を促す
「やらされる」ではなく「やってみたい」を引き出す工夫があると、子どもたちはどんどん自分から動けるようになります。
練習や試合の中でチームの課題を考えてもらい、「今日はどの練習をやってみたい?」「どう工夫すると良くなると思う?」といった声かけなどで自主的に考え、行動する機会を与えることで自主性を促す。
まとめ
すべてのチームが同じ理念である必要はありません。
しかし、「強さより優しさ、上手さより楽しさを大切にする」という価値観のもと、子どもたちが自然と集まってくるような環境づくりを目指すのであれば、今回の方針は、子ども主体で心と体の健やかな成長を支える理想的なチームづくりの一つだと言えるでしょう。
技術的な成果は、成長とともに自然に育まれるもの。
そして、こうした環境で育った子どもたちは、たとえスポーツ以外の道へ進んだとしても、自ら考え、行動する力を身につけていくと信じています。
また、長期的な視点では、こうした取り組みがプロスポーツの強化にもつながると考えられます。
「楽しさ」や「主体性」をベースにスポーツを続けた子どもたちは、より深く競技に向き合うようになり、自ら選んでトップレベルを目指す意志や動機を持つようになります。
結果として、育成世代の競技力向上に貢献し、競技の裾野が広がることで、プロスポーツ界に多様性と厚みのある人材が生まれるのです。

合同会社ORDINARIO業務執行社員/CSCS*D/NSCA-CPT/NSCAジャパンレベルⅡ認定/スポーツ医学検定1級/座右の銘「普通」/ Team 「ULTRUN」/トライアスロンチーム「アイアンノビス」マネージャー/日本トライアスロン連合公認審判員(第3種)
現在は池袋、氷川台にて一般の方を主にパーソナルトレーナーとして活動しています。マラソン、トレイルランニング、トライアスロン愛好家。フルマラソンサブ4達成、ウルトラマラソン100km完走、IRONMANミドル完走。現在、IRONMAN完走を目指し日々精進中。