RUN FOR BEER
最近ランニングしていると、「RUN FOR BEER」とプリントされたTシャツを着たランナーをよく見かけます。正直なところ…私もわりとそっち側の人間です。
実際、フランスでは「メドックマラソン」という、ワインを飲みながら走るという素敵なレースが存在します。給水所ならぬ“給ワイン所”がコース上に点在し、チーズやステーキまで振る舞われ、完走すると「フランス料理のフルコースを食べ終えた」ような感覚を覚えるとか覚えないとか!?
冗談はさておき、本題へ
お酒が好きなランナーやトライアスリートの皆さん
「大会前夜のビール1杯ぐらいは問題ないでしょ?」
「練習後の一杯が最高!」
そんな声もよく聞きます。
ですが、アルコールが持久系スポーツのパフォーマンスに与える影響については、しっかりと知っておくべきことがあります。
持久系スポーツに取り組むお酒好きにとって、日々の練習や大会で最高のパフォーマンスを発揮するためには、「アルコールとの付き合い方」も重要な要素です。
今回は、アルコールが持久力や回復に与える影響を整理してみようと思います。
アルコールが持久力パフォーマンスに与える影響
1. 急性の影響 ― 少量でもパフォーマンス低下
少量(0.5 g/kg、体重70kgなら缶ビール2本程度)であっても、アルコールは持久系パフォーマンスを低下させます。
体内にアルコールがあると、代謝はまずアルコールの分解を優先するため、本来エネルギー源として使いたい炭水化物や脂質の利用が妨げられ、エネルギー供給が不安定に。結果として持久力は落ちてしまいます。
→ 高強度の練習やレースでベストを狙うには、体内にアルコールを残さないことが極めて重要です。
2. 慢性的な影響 ― 体組成の悪化
慢性的な飲酒は、体脂肪の増加や筋量の減少を招き、体組成に悪影響を及ぼします。
持久系スポーツでは「体重あたりの筋力」や「最大酸素摂取量(VO₂max)」がパフォーマンスを大きく左右するため、これらの変化は運動効率の低下に直結。
つまり、アルコール摂取そのものの影響とは別に、間接的にパフォーマンス低下へ繋がります。
3. 回復期への影響 ― リカバリーを妨げる
運動直後の数時間は、筋グリコーゲンを最も効率的に再合成できる“ゴールデンタイム”。
しかしこのタイミングでアルコールを摂取すると、炭水化物補給が後回しになり、回復が遅れてしまいがち。
さらに、回復に不可欠なタンパク質の摂取も、アルコールによって食事バランスが乱れると筋タンパク質合成が十分に刺激されず、筋肉の修復や成長が阻害される可能性があります。加えて、アルコール自体が筋タンパク質合成を直接低下させることも指摘されています。
→ 結果として、エネルギー不足や筋肉修復の遅れを招き、ウエイトトレーニングや持久力トレーニングの効果を得られにくくなり、パフォーマンス低下につながります。
まとめ:自己ベストを狙うなら“戦略的に嗜む”
最高のパフォーマンスを発揮したいなら、アルコールとの付き合い方にも戦略が必要です。
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レースや練習の2〜3日前はアルコールを控えるか、ごく少量にとどめる
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運動後はまず栄養と水分を優先し、アルコールは回復が済んでから
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日常的な飲酒習慣を見直し、体組成のバランスを維持する
「飲まない」のではなく「嗜む」。
それが、持久系アスリートにとっての賢い選択です。
参考文献
• NSCA Coach: The Effects of Alcohol on Athletic Performance
• Barnes M. et al. “Alcohol: Impact on Sports Performance and Recovery in Male Athletes”
• Rodrigues R. et al. “Combined and isolated effects of alcohol consumption and sleep deprivation on aerobic performance”
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合同会社ORDINARIO業務執行社員/CSCS*D/NSCA-CPT/NSCAジャパンレベルⅡ認定/スポーツ医学検定1級/座右の銘「普通」/ Team 「ULTRUN」/トライアスロンチーム「アイアンノビス」マネージャー/日本トライアスロン連合公認審判員(第3種)
現在は池袋、氷川台にて一般の方を主にパーソナルトレーナーとして活動しています。マラソン、トレイルランニング、トライアスロン愛好家。フルマラソンサブ4達成、ウルトラマラソン100km完走、IRONMANミドル完走。現在、IRONMAN完走を目指し日々精進中。