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スポーツ医学 トレーニング

トレーニング指導者が知っておくべき『運動時に注意が必要な薬』

どれだけ効果的なトレーニングプログラムでも、安全が担保されていなければ意味がありません。
トレーニング指導において最優先すべきなのは「安全の確保」です。

そして、どんなに安全に気を使っていても、事故やケガのリスクは0ではありません。だからこそ気を付けることはすべておこなわなければなりません。

運動中の事故は、一つではなく、体力レベル、既往歴、体調、環境、トレーニング強度など複数の要因が重なって起こることがほとんどではないでしょうか。

その中の一つとして見落とされがちなのが、服用している薬の影響です。

薬の種類によっては、心拍数の反応を変化させたり、低血糖や脱水を起こしやすくしたり、筋肉や集中力に影響を与えることがあります。そのため、トレーニング指導を行う際には、初回のスクリーニングで現在服用している薬についてできるだけ詳しく確認しておくことが重要だと考えます。

また、服用している薬は治療状況によって変更されることも少なくありません。安全にトレーニングを継続していくためにも、薬の種類や服用状況に変更があった場合には報告していただくことを、あらかじめクライアントに伝えておくことが大切ですね。

今回は、トレーニング指導者が知っておきたい「運動時に注意が必要な薬」について、主な効果や副作用、トレーニング時の注意点とあわせて整理していきます。

パーソナルトレーナーとして特に確認したい薬

現場的には特に以下の薬は要チェックです。

1.β遮断薬

β遮断薬(ベータ遮断薬)は、主に「心臓や血圧に関わる病気」で処方される薬で、交感神経のβ受容体をブロックすることで心臓の働きを抑えます。

心拍数が上がりにくくなるので、心拍数による運動強度管理ができなくなります。

そのため主観的運動強度(RPE)や会話テストで運動強度を管理する必要があります。

2.Ca拮抗薬(カルシウム拮抗薬)

Ca拮抗薬は、血管や心臓の筋肉にあるカルシウムチャネルを抑えることで血管を拡張し、血圧を下げる作用を持つ薬です。主に 高血圧狭心症 の治療に使用されます。

血管拡張作用により血圧が下がるため、運動時や急に立ち上がったときにめまいが起こることがあるので、注意が必要です。

3.利尿薬

利尿薬は、高血圧心不全腎不全浮腫などで処方され、体内の余分な水分を尿として排出することで体液量を調整する薬です。

因みに利尿薬は、体重を落とす目的ドーピング検査で薬物を薄める目的使われることがあるため世界アンチ・ドーピング機構WADA)では
多くの競技で禁止薬物になっています。

トレーニングにおいては、尿と一緒にナトリウムやカリウムも排出してしまうので、脱水や筋痙攣などの気を付ける必要があります。

4.糖尿病薬

糖尿病のの血糖コントロールのために使用されます。

運動指導においては、低血糖のリスクが高くなるので十分注意する必要があります。

5.スタチン

スタチンは、脂質異常症高LDLコレステロール血症の治療、そして動脈硬化による心血管疾患の予防のために処方される薬です。

スタチンでは筋肉に関連する副作用が知られており、筋肉痛や異常な疲労などがあります。その中で最も重篤なものが非常にまれではありますが横紋筋融解症です。

6.アレルギー薬

アレルギー薬は、アレルギー反応に関わるヒスタミンの働きを抑えることで、くしゃみ・鼻水・かゆみなどの症状を軽減する薬です。主に アレルギー性鼻炎花粉症蕁麻疹 などの治療に使用されます。

一部の抗ヒスタミン薬では眠気や集中力低下が起こることがあり、運動パフォーマンスに影響する可能性があります。近年、抗ヒスタミン薬の中には眠気が出にくい「第二世代抗ヒスタミン薬」も多く、現在では運動への影響が比較的少ない薬も増えています。

7.睡眠薬・抗不安薬

睡眠薬や抗不安薬は、不眠や強い不安を軽減する目的で処方される薬です。脳の働きを抑えることで神経の興奮を鎮め、睡眠を促したり不安を和らげたりします。

睡眠薬・抗不安薬では鎮静作用により、反応速度や集中力が低下することがあります。そのため運動パフォーマンスに影響する可能性があります。
特に高強度のトレーニングや、バランスや反応を必要とするエクササイズでは注意が必要です。また高齢者ではふらつきが生じることがあり、転倒リスクにも注意が必要です。

8.痛み止め

痛み止め(鎮痛薬)は、痛みや炎症を抑えるために使用される薬です。
代表的な薬にはロキソニンや イブプロフェンなどのNSAIDsがあります。これらは炎症や痛みに関わる物質であるプロスタグランジンの産生を抑えることで、痛みや炎症を軽減します。

また、神経の過敏な興奮を抑えることで痛みを和らげる薬としてリリカやタリージュなどがあり、主に神経障害性疼痛の治療で使用されます。

痛み止めを使用すると痛みが軽減するため、ケガをしている状態でも無理に運動を続けてしまい、症状を悪化させる可能性があります。また、NSAIDsでは脱水状態や長時間の運動と重なると腎臓への負担が増えることがあり、腎機能に影響する可能性もあります。

さらに、NSAIDsでは胃粘膜への影響により 胃炎胃潰瘍 が起こることがあります。一方、リリカやタリージェでは眠気やめまいが生じることがあり、運動時には注意が必要です。

そのため、痛み止めを服用している場合は、痛みを抑えて無理に運動を続けないことや、脱水状態での長時間の運動を避けること、転倒リスクなどに注意が必要です。

9.ステロイド薬

ステロイド薬は、強い抗炎症作用や免疫抑制作用を持つ薬で、炎症や免疫反応を抑える目的で使用されます。主に 気管支喘息関節リウマチアレルギー性疾患自己免疫疾患 などの治療に用いられます。

長期間の使用では ステロイド筋症 と呼ばれる筋力低下が起こったり、骨密度の低下により骨粗鬆症のリスクが高くなります。

そのため高強度のウエイトトレーニングは注意が必要です。

10.筋弛緩薬

筋弛緩薬は、筋肉の緊張を和らげることで痛みやこわばりを改善する薬です。主に 腰痛頚椎症肩こり筋肉のけいれん などの治療に使用されます。

筋弛緩薬は筋肉の緊張を抑える薬であるため、筋力発揮やバランス能力が低下する可能性があります。バランスを要するエクササイズや高重量トレーニングでは安全性に十分注意する必要があります。

薬名(代表例)何の病気で処方されるか主な効果主な副作用トレーニング時の注意
プロプラノロール、ビソプロロール、アテノロール(β遮断薬)高血圧、不整脈、狭心症、心不全心拍数と血圧を下げる心拍数低下、疲労感心拍数で運動強度を判断しにくい
アムロジピン、ニフェジピン(Ca拮抗薬)高血圧、狭心症血管拡張めまい、むくみ急な立ち上がりで立ちくらみ
フロセミド、ヒドロクロロチアジド、スピロノラクトン(利尿薬)心不全、高血圧、浮腫体内の水分排出脱水、電解質異常暑熱環境や長時間運動で脱水
インスリン、グリベンクラミド、グリメピリド糖尿病血糖値を下げる低血糖運動により低血糖のリスク
アトルバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン(スタチン)脂質異常症コレステロール低下筋肉痛、筋障害強い筋肉痛や異常な疲労に注意
ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、セチリジン(抗ヒスタミン薬)アレルギー、花粉症アレルギー反応抑制眠気集中力低下に注意
ゾルピデム、エスゾピクロン(睡眠薬)不眠症入眠促進眠気、ふらつき判断力低下、事故リスク
ジアゼパム、アルプラゾラム(抗不安薬)不安障害、パニック障害不安軽減眠気、反応低下バランス低下
プレドニゾロン、デキサメタゾン(ステロイド)リウマチ、自己免疫疾患、喘息強力な抗炎症作用筋萎縮、骨粗鬆症高強度運動で筋損傷や骨折リスク
ロキソプロフェン、イブプロフェン、ジクロフェナク(NSAIDs)腰痛、関節痛、炎症鎮痛、抗炎症胃腸障害痛みが隠れてケガを悪化させる可能性
リリカ(プレガバリン)、タリージェ神経障害性疼痛、坐骨神経痛神経の興奮を抑える眠気、めまい転倒リスク
ミオナール(エペリゾン)、テルネリン腰痛、肩こり、筋緊張筋弛緩眠気、脱力筋力低下

パーソナルトレーナーが知っておくべき「薬との向き合い方」

パーソナルトレーナーは、医師や薬剤師とは異なり、薬の処方や服用方法について指示を出す立場ではありません。

そのため、薬を飲むべきかどうか、服用を中止すべきか、用量を変更すべきかといった医学的な判断を行うことはできません。

だからこそ、クライアントが服用している薬を把握し、その薬が運動にどのような影響を与える可能性があるのかを理解しておくことが重要です。

例えば、薬によっては次のような影響が生じることがあります。

・心拍数の反応が変わる
・めまいや眠気が出る
・低血糖を起こしやすくなる
・脱水のリスクが高まる

これらの影響は、トレーニング内容や強度によっては事故につながる可能性もあります。

そのためパーソナルトレーナーとしては、初回のスクリーニング時に服用している薬を確認しておくこと、そして薬の変更や追加があった場合には報告してもらうことが重要になります。

トレーニングを安全に継続していくためには、体調や既往歴だけでなく、服用している薬の変更を把握しておくことも大切です。

しかし実際の現場では、口頭での確認だけでは見落としが起こることもあります。

そこで当方では、健康状態や服用薬の変更があった場合に確認できる書面として
「健康状態変更確認書」 を用意しています。

下記より 無料PDFとしてダウンロード できますので、パーソナルトレーニングを行っている方や、運動指導の現場で活用したい方はぜひご利用ください。

クライアントの安全を守るための管理ツールとして役立てていただければ幸いです。

健康状態変更確認書(無料PDFダウンロード)

薬の判断は医療専門職に委ねつつも、パーソナルトレーナーはその情報をもとに運動強度の調整、種目の選択、体調の観察を行い、安全に配慮したトレーニング指導を行うことが求められるのではないでしょうか。

 

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